青年と美しい娘

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それから毎日、彼は彼女に会いに行きました。 最初のうちは彼女も困惑していましたが、時が経つうちに笑顔が増えていきました。 彼は彼女のためにたくさんの花をあげ、彼女も彼のために料理を作りました。 そして、いつしか二人は恋人同士になりました。 彼は美しく、しかも今までの恋人と違って謙虚な彼女を深く愛し、友人たちに自慢しました。 「彼女は本当に美しい。それなのにそれを傲らず、いつでも他人を思いやる優しい女性だ」 彼女はあまり外には出たがらなかったので、友人たちは彼から彼女の話を聞くだけでしたが、そんなに素晴らしい女性なら一度は会ってみたいものだと思い、彼に頼みました。 彼も悪い気はしないので、二つ返事で友人に彼女を会わせることを約束しました。 早速彼は彼女に、友人たちに会ってくれるよう頼みました。 しかし彼女は悲しげな顔をして、ただただ首を横に振りました。 「私を人に見せたって自慢にはなりません。お友達には悪いけれど、断ってください」 どんなに説得しても、彼女は承諾してくれません。 彼は仕方なく、友人たちに理由を話して断りました。 友人たちは皆ガッカリしましたが、一人が 「だったら窓からこっそり覗けば良い」 と言いました。 彼はやめるように言いましたが、彼女を見たいと思う友人たちの心を止めることは出来ず、結局友人の一人だけが彼女の家に行き、窓から覗いてくることになりました。 その友人が覗きに行っている間、彼は心の中で彼女に謝り続けました。 しかし友人が帰ってくると、罪悪感など忘れたかのように、彼女はどうだったかとしきりに尋ねました。 友人は困惑したように、彼に聞きました。 「彼女のどこが美しいのだ?」
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