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その後数人が彼女を見に行きましたが、その全ての人が彼女を美しいとは言いませんでした。
彼は友人たちを罵り、急いで彼女の家に行きました。
家に着くと夕方で外は暗いというのに、家には明かりがついていません。
不思議に思いながら家に入ると、彼女は暖炉の前でこちらに背を向けて泣いていました。
「どうしたの?」
彼が慌てて近寄ろうとすると、
「来ないで!」
鋭く彼女は叫びました。
最初は躊躇しながらも、彼は彼女の近くへ行き、横に膝をつきました。
彼女の前には中央から外に向かってひびの入った手鏡が置いてありました。
手鏡のことも、泣いている理由を聞いても、ただ泣きじゃくるだけの彼女に彼は困りはてました。
仕方なくしばらくの間彼女の背中を撫でていると、彼は友人たちの言葉を思い出しました。
美しいはずなのに、皆が美しくないと言った彼女。
気になった彼が彼女の顔を覗くと、その顔は彼女の白い両手に隠れていました。
迷いながらも、彼は彼女の手首を握り、左右に開こうとしました。
それに気付いた彼女は腕に力を込めましたが、そのうちに諦めたのか力がふっと抜けました。
彼女の手が離れると同時にゆっくりと現れた顔を見て、彼は心臓が一瞬止まったように感じ、ただただ呆然と彼女を見つめました。
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