チャンス

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「オーストラリアですか?私が?」 それは突然の辞令だった。 専門学校を卒業し、旅行代理店に就職してから2年目。 戸板美緒、22才。 こんな社会経験の薄い社員に海外赴任を任せるとは、なかなかチャレンジ精神旺盛な会社である。 「美緒ちゃん、入社した時に、いつかは海外でって言ってたよね。今回の海外赴任、是非若い子に現地でキャリアアップを図ってもらおうっていう、ある意味テスト的な試みでさ。美緒ちゃん、ずっと英語も勉強してきて、俺たちもそれ見てきたからさ、今回は是非、美緒ちゃんに現地で活躍してほしいって満場一致で決まったんだよ。」 「はぁ・・・そうなんですか・・・」 美緒は観光系の専門学校を卒業し、海外生活を夢見て英語の勉強だけは続けてきた。 確かに現在、英語は問題なく話せるようになっていたし、キャリアアップのテスト的な試みにノミネートしてもらえるなんて光栄な事だ。 でも・・・。 「それって、少し考えさせて頂く事できないですか?」 美緒は遠慮がちに課長に聞いてみた。 「え、なんで?イヤなの?」 心外、とばかりに課長が驚いた顔を見せた。「いえ、イヤという訳じゃないんですが・・・家族とも相談したいですし。」 「もちろん、考えてもらって良いよ。まだまだ赴任まで半年あるしね。ま、断られたら次の候補は考えてないから、困っちゃうけど。今月中に答え出してくれればいいからさ。ちなみに赴任期間は2年間。場合によっては延長になる事もあるけど、その時はまた交渉があるからね。この時期の2年間、海外で修行できるってすごいチャンスだと思うよ。よく考えて答え出せな。」 課長は笑いながら美緒の肩をポンと叩いた。
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