5人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ敷かれた布団の上には情事の後が残っていて、単に身を包みながらそのまま口付けを交わした。
軽く触れるだけの口付け。
その口付けに狂いそうになる。
もっと。と望む心とこれ以上は壊れてしまうという恐怖。
愛しいと、愛しいと口に出せば出すほど真実が薄まって言葉が軽くなる。
言葉などなくなればいいのに、と強く願った。
「希佳。」
その低い声で囁かれる言葉にいつも安心させられる。
不安な心も、今宵違う誰かに抱かれる後ろめたさも、全て取り除いてくれる。
そのまま心地よい眠りにつきたかったがそうもいかない。
外から強い朝日が差し込んでおり、後一刻もすればこの部屋を出て行かなければならない。
最初のコメントを投稿しよう!