白い簪

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まだ敷かれた布団の上には情事の後が残っていて、単に身を包みながらそのまま口付けを交わした。 軽く触れるだけの口付け。 その口付けに狂いそうになる。 もっと。と望む心とこれ以上は壊れてしまうという恐怖。 愛しいと、愛しいと口に出せば出すほど真実が薄まって言葉が軽くなる。 言葉などなくなればいいのに、と強く願った。 「希佳。」 その低い声で囁かれる言葉にいつも安心させられる。 不安な心も、今宵違う誰かに抱かれる後ろめたさも、全て取り除いてくれる。 そのまま心地よい眠りにつきたかったがそうもいかない。 外から強い朝日が差し込んでおり、後一刻もすればこの部屋を出て行かなければならない。
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