第三話

4/6
前へ
/86ページ
次へ
学校に向かう道で、篠塚の後ろ姿を見つけた。 翁長が目の前に居るから、声は掛けないようにした。 「…篠塚…。話し掛けなくていいのか?」 掛けないと決めたのに、心が揺らいでしまう。 早く伝えたいけれど、本人目の前にしては意味がない。 「花島?」 「掛けないって決めたの」 「…俺に遠慮してんのか?気にせず、走って行って来いよ」 遠慮ではないのだけれど、そこまで言われると、行きたくなる。 「でも…。迷惑じゃないかな…」 「想われるのは、迷惑なんかじゃねぇよ。恋は相手にも自分にも、重荷にはならねぇんだ。なるようなら、それは恋じゃねぇ」 大人な意見だ。 けど、どこかで聞いたことがあるような気がするのは、何故だろう。 この前見た、テレビだったかな。 「じゃ、行ってくる」 「お、おう。行ってこい」 僕は、翁長を背に篠塚が居る方に走った。 「……花島って、走れたんだな…」 翁長が、どんな表情をしていたかなんて、この時の僕にはちっとも解らなかったんだ。 .
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加