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学校に向かう道で、篠塚の後ろ姿を見つけた。
翁長が目の前に居るから、声は掛けないようにした。
「…篠塚…。話し掛けなくていいのか?」
掛けないと決めたのに、心が揺らいでしまう。
早く伝えたいけれど、本人目の前にしては意味がない。
「花島?」
「掛けないって決めたの」
「…俺に遠慮してんのか?気にせず、走って行って来いよ」
遠慮ではないのだけれど、そこまで言われると、行きたくなる。
「でも…。迷惑じゃないかな…」
「想われるのは、迷惑なんかじゃねぇよ。恋は相手にも自分にも、重荷にはならねぇんだ。なるようなら、それは恋じゃねぇ」
大人な意見だ。
けど、どこかで聞いたことがあるような気がするのは、何故だろう。
この前見た、テレビだったかな。
「じゃ、行ってくる」
「お、おう。行ってこい」
僕は、翁長を背に篠塚が居る方に走った。
「……花島って、走れたんだな…」
翁長が、どんな表情をしていたかなんて、この時の僕にはちっとも解らなかったんだ。
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