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その日の事と、今回のことがどう関係しているのだろう。
寮の部屋に入って、翁長は僕の腕を引っ張り無理矢理座らせた。
「ごめんな。秘密厳守って理由で、何も喋らない俺が悪かった」
「謝らなくても」
「…ルームメイトにぐらい、話したっていいだろう」
それは、僕が他の人に話さない、を前提にしている言葉だった。
「俺は、長尾哲平だ」
「え?」
あれ、なんだろう。
聞き間違いかな。
疲れが出たのかな。
友人から、とんでも発言をされたような錯覚に陥ってしまった。
「あぁだから、本物だっつの。ぐるぐるさせるな」
「……。あ、だから金銭があるんだね」
「…そこで納得か…」
翁長がうなだれた。
えっと、翁長が長尾哲平だとすると、小説家と言うことになるわけですね。
「…小説、読んでも…いい?」
「あ、あぁ…」
翁長の顔が赤くなった、やっぱり目の前で読まれるのは、恥ずかしいのだろうか。
「…あ」
「なんだ?」
「これ、最新作だから、一番古いの読みたい」
「あぁ、はいはい」
呆れた顔をして、ベッドの下から本を数冊出した。
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