第四話

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数冊の本を見て、ふと疑問に思った事を翁長にぶつけてみた。 「いつから、小説家…なの?」 「高一から、今まで」 「…気付かれなかった、の?」 「ルームメイトのお前が、気付かないからな」 僕は、鈍感すぎた。 ずっとルームメイトだったのに、何も気づけなくて、馬鹿だ。 「いや、今までもこれからも、秘密厳守で頼む」 「…うん。解った」 僕と翁長の秘密。 秘密ってなんだかドキドキしちゃう言葉だ。 「あ、じゃあ読むね」 「…。なぁ」 「ん?」 「……。休みの日、出掛けないか?」 いきなりの誘いに、思わず時間を確認した。 長針も短針も、秒針も通常通り右回りに回っていた。 「おい、聞いてるか?」 「行く」 「……。無防備」 「え?」 「なんでもない。んじゃあ、どこに行きたい?」 「えっと…」 小さくて聞き取れなかったけど、なんて言ったのかな。 少しだけ、気になった。 「んじゃあ、動物園でいいんだな?」 「うん。わーい、楽しみだなぁ!」 「ふっ」 次の瞬間、電話の鳴る音が、響き渡った。 Next
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