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翁長が電話に出てから、重い沈黙が流れた。
翁長は、電話先の人に怒鳴っているようだった。
「……翁長?」
「あぁあ!」
翁長は、頭を掻いて苛立ちを露わにしていた。
僕はそれにびっくりして、体がビクついてしまった。
「ごめん。急な仕事が入った」
仕事って、小説書くことかな。
僕の相手をしていられないって、事なのかな。
「気にしない…」
「休みの日も、やらなきゃ間に合わなくて…」
「……」
あぁ、そう言うことか。
僕との約束なんか、気にしなくてもいいのに。
「気にしなくて、いいよ」
「……。間に合わせるから、動物園に行こう」
「…無理しなくても」
「絶対に間に合わせる」
翁長の目には、炎が見えた気がした。
動物園に、そんなに行きたいのか。
だったら、答えは決まったよね。
「待ってるよ。翁長が終わるまで、待ってる」
「…ありがとう。がんばるよ」
そう言って、翁長は机に向かい始めた。
僕も、邪魔しないように、翁長の書いた小説を読むことにした。
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