第五話

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学校が終わって、翁長はすぐに帰ってしまった。 僕は、その背中だけを見ていた。 いってらっしゃいの言葉も言えずに。 「花島君、今日は一人で帰るのかな?」 「…えっと」 「津守岳直だ」 津守、そんな名前だった、思い出せた、良かった。 そんな津守が、どうして僕に話し掛けてきたのだろう。 「一緒に寮まで帰らないか?」 「…同じ方角」 「良いってことかな?」 同じ道なんだから、断るのが変だと思う。 「花島君、弥生って呼んでも、いいかな?」 「いいよ?」 「ありがとう、弥生」 名前で呼びたいなら、勝手に呼べばいいと思うのだが。 難しい問題が、発生するのかな。 「ちなみに、岳直と呼んでくれていいよ?」 僕は、呼ばないので言われても困る。 「……名前で呼ばれたら、嬉しい?」 「えっ…。そりゃもちろん!嬉しいよ!」 ふーん、そう言うものなのか。 あれ、誰でもそうなのかな。 「誰でも、そうなの?」 「ち、違う!弥生だから嬉しいんだ!」 僕だから嬉しい、かなり大げさな気がする。 .
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