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学校が終わって、翁長はすぐに帰ってしまった。
僕は、その背中だけを見ていた。
いってらっしゃいの言葉も言えずに。
「花島君、今日は一人で帰るのかな?」
「…えっと」
「津守岳直だ」
津守、そんな名前だった、思い出せた、良かった。
そんな津守が、どうして僕に話し掛けてきたのだろう。
「一緒に寮まで帰らないか?」
「…同じ方角」
「良いってことかな?」
同じ道なんだから、断るのが変だと思う。
「花島君、弥生って呼んでも、いいかな?」
「いいよ?」
「ありがとう、弥生」
名前で呼びたいなら、勝手に呼べばいいと思うのだが。
難しい問題が、発生するのかな。
「ちなみに、岳直と呼んでくれていいよ?」
僕は、呼ばないので言われても困る。
「……名前で呼ばれたら、嬉しい?」
「えっ…。そりゃもちろん!嬉しいよ!」
ふーん、そう言うものなのか。
あれ、誰でもそうなのかな。
「誰でも、そうなの?」
「ち、違う!弥生だから嬉しいんだ!」
僕だから嬉しい、かなり大げさな気がする。
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