夜葬序曲

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黒い何かは、力を緩めようとしない。恐らくは相手の『術式』なのだろうが、その系統も構成も皆目見当がつかない。 そもそも、現代に存在する術式、即ち魔導術に、このような真っ黒い何かを操るモノなどあっただろうか? 「……ッ」 いや待て。 黒い何か。 黒。 ──黒? 「ま、さ……か……ッ!?」 心の内に浮かび上がった一つの仮定に、ダグラスは思わず身震いした。 そんな筈ない。『アレ』が存在する筈がない。『アレ』は永遠に失われた筈なのだ。 なのに、なのに目の前のコイツは……! 「貴様……これ、は……!」 ギチギチと、身体が軋む致命的な音が確かに聞こえた。息も絶え絶えになりながら、ダグラスは言葉を吐き出そうとする。 「ア……アモル、ファ……」
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