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まぁ、ダグラスだってもう子供ではないから、多少の寂しさを我慢する事くらいは出来る。
だから今までこの悩みを誰かに打ち明けた事は無いし、今この瞬間も黙々と一人で歩いている訳だ。
定間隔に並んでいる、白い街灯に照らされている坂道を黙りこくって歩いて行くと、やがてその頂上に見えてくるのは小さいながらも中々の風格を備えた一軒家。
そう、ダグラスには家族がいなくとも財力がある。力がある。
独りだって構わない。そんな事はどうでもいい。
「……はぁ……」
ヒュウ、と風が悲しい音を立てながら通り過ぎていった。まるで内心の強がりに同情されたかのように感じてしまい、ついつい嘆息してしまう。
如何に権力があろうと、財力があろうと、人間はいずれそれだけでは何かが物足りないような気がしてくる。何か、支えが欲しくなる。
少し前までは力と金の信者だったダグラスも、どうやら例外ではないみたいだった。例えば休日、何処かに出掛ける家族連れなど見かけると、なんとも言えない気持ちが湧き上がってくるのである。
『ヒトは、一人では生きていけない』。
誰かがそんな事を言っていたような気がするが、さて、誰だっただろう。以前だったら鼻で嗤っていただろうその言葉だが、今なら真実だと素直に認める事が出来る。
今更、という感は否めないけれど。
「……」
虚しい気持ちを、何度目になるか分からない小さな溜め息と共に吐き出しながら、ダグラスは我が家の門に手を掛ける。
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