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「フン……」
ゴツゴツと床をブーツで踏みしめる音をたてながら、影はダグラスに向かって歩いて来た。
一歩。また一歩。
それは余りにも普通の歩き方で、不審者というよりは友人に近付いて来られるような感覚に近い。
唐突な事だった事もあり、ダグラスは警戒するタイミングが一瞬遅れてしまった。
狭いリビングの中だ、距離はその一瞬の間で、あっという間に詰められてしまう。
「!」
ビョウ、と空気を無理矢理引き千切るような音がした。
咄嗟に脇に跳んだダグラスの体を何かが掠め、直後に破砕音がその場に響く。
慌てて振り返って見てみれば、ダグラスが今まで立っていた場所が、影が振り下ろした巨大な何かによって粉砕されているのが見えた。
「貴様!」
ここまでされたら、こちらも黙ってはいられない。躊躇う事無く、密かに構成していた『術式』の編成を急展開させる。
ダグラスの前に、光の図形と文字で構成された魔法陣が出現し、薄暗い室内を明るく照らした。
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