序章

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歌劇町 首都内にある日本最大の繁華街。 毎夜、街の彼処は無情な暴力と欲望の宴で賑わう夜の街。 それは劇場前の通り。 人が行きかう通りを我が物顔で闊歩する男達十数名。 向かってくる人々は接触を拒み静かに退き道を譲る。 それはその集団の放つ近寄り難い雰囲気。顔、容子の第一印象から滲み出る堅気らしからぬ雰囲気。 それと語るものは無かったがその男達は明らかにヤクザ者であった。 ハイエナの様に陰湿で暴力的な内面を表す彼らは人を遠ざけるフェロモンのような物を醸し出していた。そんな嫌煙フェロモンをぶちまきながら人を遠ざけ、進軍する男達の足が不意に止まった。 先頭の集団の頭らしき男が止まってそれに合わせるかのように集団全体がぴたりと止まっていた。 一人の青年が道を遮っていた。 逆立った黒髪。 幼さは残すも、荒々しさを感じさせる獣の目。 男達を通りで始めて遮ったそれは信号機でも警察官でもない学ランの青年だった。 たちどまっいたヤクザにしても、それが偶然目に入った堅気にしても前代未聞だった。 ポケットに手を突っ込んで仁王立ちする青年が獣のようなぎらぎらした瞳でヤクザの集団に立ちはだかることが彼らの常識の定義を覆していたのだ。 そして常識が覆った瞬間から、匂いを敏感に嗅ぎ分け立ち止まり傍観し始める老若男女(ヤジウマ)は次第に増えていく。 一触即発の険悪なにおいが当たりに立ち込めていた。
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