序章

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多くのものがその様子を傍観する中で、先に動いたのは青年だった。 向かうものを自然と拒む雰囲気を持つヤクザの男十数名を目の前に青年は臆する事無く進んでいく。それは見ているヤクザ達が逆に不気味と感じて青年に近寄りたくなかった。 しかし青年は気付けば目の前にいた。先頭の一番貫禄のある中年の剃髪の男と目と鼻の先で視線を合わせていた。 ぞ・・・ 視線を合わせる男は只ならぬ物を眸(ヒトミ)から感じた。 「なんや?」 男はたまらず青年に声をかけた瞬間、黒く長い何かが男の鼻を激しく叩いていた。青年の右足が男の視界から消えた瞬間、男の目の前は暗くなったのだ。 激しく痛む顔面を両手で抑えもがく男の頭に冷たく堅い壁がぶつかった。 コンクリートの地面で顔を抑えてもがく兄貴分。 指と指の隙間から流れている大量の血液。 男と青年が接触した一瞬の出来事は傍観していた者から言葉と意識を奪い去っていた。 しかしすぐに周囲はざわめきで騒がしくなる。意識の戻った蹴られた男の仲間は「うわっ!?」「な、何しやがる!」 と情け無い驚きの混じった怒声を浴びせていた。 しかし情けないとはいえ相手はハイエナの様なヤクザである・・・次の瞬間青年に起きる事を創造してざわつき、固唾を呑む野次馬達。 次の瞬間、彼らは恐怖した。彼らとはその青年以外のその場にいて、口元を二夜つかせて不適に笑う青年を見た人全員である。 気味が悪い。そう感じつつ怒声を浴びせていたヤクザのうちの一人が声を失う。 男の股間に冷たい物が触れたと感じた瞬間、それは睾丸の下で爆ぜたのである。 青年の金的蹴りを睾丸で受けた男は目を白くして、股間を両手で抑えその場に脆く跪いた。 青年は不敵な笑みでそれを上から眺めていた。
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