序章

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飛び掛かってきた男のナイフは青年の頬をかすめた。 ナイフにそるように線が出来、線からは赤い飛沫が飛び散った。やがて液体は細くなり首に垂れる。 しかし青年の口の笑みは残っていた。 むしろ笑みに輝きが増したようにも見えた。 青年は攻撃してきた男を目で捕らえ、飛び掛った。 光る何かが宙に舞った。 青年が男の左手のナイフを手刀で払い飛ばした。 続けて上腕を脇に挟みそのまま後ろに仰け反る。 男の腕が二つの音を奏でる 骨の折れる音。 それに続いて肉が傷つく音。 青年はすぐさま掴んでる腕を放し、続けて男の顎へ勢いを乗せた拳を振り降ろす。 男は前に足を滑らす様に倒れる。 「あが…ああ、あ…」 倒れた男は破壊された腕の痛みを悲鳴で表そうとした。 しかし降ろされた拳により男の顎は見事に外れていた。悲鳴はあがらなかった。 言葉にならないうめき声だけが響く。 アスファルトでもがくミミズのように地をのたうつ男…… 間も無くして目を白くして意動きを止めた。 「ひぃっ!」 倒れてる仲間を忘れ、残りのヤクザ達は包囲を解き逃げ出した。 倒れて地を這いずり回る男達数名の中に立っている一人の雄。 弥勒王 文太{ミロクオウ ブンタ} 後に男は裏社会の伝説となる……
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