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「なぁ、お前さ、この家には一人で暮らしてるのか?」
紅茶を一口。
「いいえ。」
「へぇ、親と暮らしてるのか?」
そして、一口。
「いいえ。」
「そうか。同居人は今外出中かい?」
また、一口。
「いいえ。」
この家は一部屋しかない。周囲を見回してみる。
…当然ながら、誰もいない。
「おいおい、どこにもいないじゃないか。まさか透明人間だとでも?」
「…随分話好きなのね。うるさいくらいに。 残念ながら同居人は透明人間ではないわ。あなたの価値観では"人"ですらないでしょうね。」
あたりは人形がたくさん動いていた。
「同居人って、こいつらか?」
「えぇ。貴女にとってはただの人形でしょうけど、ね。私にとっては家族同然の存在。」
どうみてもただの人形。それを家族と呼ぶ少女。 魔理沙はまた疑問が浮かんでしまい、そのまま質問にした。
「なぁ、お前友達いないのか?」
「そんなもの、いらないわ。私はこの子たちがいてくれれば十分。」
「それは友達と遊ぶ事を知らないだけだぜ! 友達と遊ぶのは楽しいもんだぜ。」
「そう。 それは良かったわね。」
「いや、だからさ…。」
「私は"知らない"の。 知らないものは知る必要はないわ。興味のあるモノ以外はね。」
少女はそう言うと、また視線を本に戻した。
「悲しいこと言うなって。そんなこと言ってたら人生つまらないままだぜ。」
「今。今貴女がここから去れば、すべては元通り、それを知らないままの人生になれるわ。」
「う~…。」
完全な拒絶の反応を見て何も言えなくなってしまった。このまま去るのは簡単だが、それでは良くない、気がする。 なにより、悔しい。完璧に言い負かされたというか、このまま帰ると相手の思うつぼだ、とおもう。
「なぁ、お前さ、いつからここに住んでるんだ?」
「さぁ。そんなもの忘れたわ。」
「そんな…、ずっと一人で生きてきたなんて…」
「それと。"お前"って言うのはやめて。」
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