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1863年
雪から雨へと変貌しようとしていた2月
壬生浪士組が発足したころの話
「どうしたものか」
一人の男があるものの前で悩んでいた。自分で“拾って”きたものだがその対処に悩んだ。
その手の“扱い方”には慣れていたはずだが。
男は溜め息を漏らすと一先ずそれを“押し入れ”にいれ、ある人物の元へ訪れた
「幸村...幸村時雨は居るか?」
「はい。如何なさいました?土方さん」
古い民家の戸が開くとそこには無化粧の年若い女が立っていた。質素な中にも美しさが引き立つ女は綺麗な笑顔を見せ中に土方と呼んだ男を入れた
「お前に用がある。要らねえ着物持って俺の部屋に来い」
時雨と呼ばれた女は一瞬不審そうに眉を寄せたがわかりましたと頭を下げると直ぐに準備に取りかかった。
「これはまだ内密にお願いしたい」
「はい?...わかりました」
部屋の前で言われた言葉に時雨は不思議に思いながらも頷いた。土方に続き彼の部屋に入れば布団が敷かれていた。土方はそれを通り過ぎ、立ち止まったのは押し入れの前だった
「騒ぐなよ...」
土方は後ろをちらりと見ると押し入れを開けた。その瞬間に時雨は言葉を失った。そこにはうずくまった少女が眠っていた
「道端で行き倒れていた。着替えをさせて、目を覚ましたら飯を食わせてやれ」
「...はい。この子幾つ?十はとっくに過ぎてるみたいだけど。この子をどうするつもりですか?」
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