SS3

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涼やかな声と裏腹にその最後の言葉は土方に刺さった。土方は溜め息を漏らすと少女を抱き上げ布団に寝かせた。 「これから大所帯になる可能性が...いや、そうなる。お前一人じゃ大変だろ?この娘、何れ使える」 その言葉に時雨は微かに笑みを零した。素直じゃないなと彼を見れば土方は視線を逸らした。可哀想だから賄いにしたいと素直に言えばいいのにと思う。 「任せた。」 「はい。」 土方が背を向け部屋を出ようとすると時雨は静かに頭を下げた 「本当に起きないのね。...この子綺麗。お姫様みたいね。でも、肉刺の痕...この子一体...」 着替えを済ませても起きる気配が無い少女を見て時雨は優しげな笑みを零し少女の頬を撫でた。 端正な顔立ち、長い睫、艶やかな髪、透き通った白い肌。裕福な家で育ったような少女が何故ボロボロの着物で行き倒れになっていたのだろうか。時雨の中で疑問が浮かんだ。 「要注意かな?...でも“妹”か...楽しみだなぁ」 時雨はワクワクを隠しきれない。少女に笑みを向けるとふわりと立ち上がり土方を呼びに行った。 主人公が目を覚ます数刻前のお話
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