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生まれたのがつい最近だったようなきがしていましたが、目の前の彼女はもうこんなに大きくて三年の年月を感じる
自分の思いを滅多に吐き出さない娘がいつも以上に喋っているのはきっと不安だから。
「....大丈夫ですよ。」
“大丈夫”それはもしかしたら自分に対して掛けた言葉なのかもしれない。何に対してかは分からないが....
燈奈を見て頬を撫でれば、こちらの目をじっと見つめてくる。きっと深雪から教わったのだろう。そんな彼女に最上級の笑みを零して小さな体を抱きしめた
「大丈夫ですよ。ばいばいなんてしませんから。」
「ほんと?」
「えぇ。父上が燈奈とできる訳が無いじゃないですか。私と燈奈は絲で心が繋がっているので遠く離れていてもいつも一緒ですよ」
「いと?ひーたんいとないよ」
自分の胸の辺りをペタペタ触りだす彼女を見て思わず可笑しくなった。
「見えませんよ。特別な見えない絲で繋がっているんですから」
「ほんと?」
「えぇ。父上は嘘を付きません」
....多分ですけど
「とぉさますごいですね」
さっきと一変して感嘆している娘がまた可笑しい。
「ひながおうちにかえったらみせてください」
「そのうちに....深雪...いや、母上には内緒ですからね」
「はい」
「気をつけて行ってらっしゃい」
もう一度強く抱き締めるとすべすべした頬に軽く口づけた。忘れないためのおまじない。
燈奈はくすぐったそうに笑うと教わったように畳に戻り正座をして頭を下げた
それに何故か深雪が重なって見えた
「おとぉさま、いってまいります。」
「道中気をつけて....」
燈奈は笑顔で頷くと部屋を出て深雪を探しに行った。
「燈奈....愛していますよ....」
最愛の愛娘
一八六八年五月の終わりの出来事
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