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一八六七年四月
今年も変わらず桜は満開で隊士達も各々でこの麗らかな日々を満喫している
「今年も見事ですね....」
「はい。」
深雪は微笑むと膝の上で眠る娘の髪を梳いた。先程まで元気に木の下で一人遊びに興じていたのに。と、思うと何だかおかしくなってくる
「私達がこんなに変わってしまったのに桜だけはいつ見ても変わりませんね。」
それが嬉しくもあり何故か悲しい
「だからこそ毎年見ても安心して見ていられるんだと思いますよ?」
深雪はそれに微笑を零すと瞳を細め薄桃色の花びら達を見つめた。彼にそう言われればそんな気がしてしまう
「総司さんの仰る通りかもしれませんね。永久に変わらない永遠の美しさと安らぎ。」
変わることは悪くない。そして変えるべきものも沢山ある。
しかしながら変わってはならないもの、変わってほしくないものもそれと同じように沢山ある。
今はそちらを望んでいるのかもしれない
「私は桜の木になりたいんです」
「桜?」
総司が首を傾げる傍らで深雪は静かに微笑んだ
「桜は散ってもまた次の年にはまたその薄桃色の花は愛されますから....」
「深雪さん....」
総司は彼女の言う事に少し驚いた。彼女は自分が何を言ってどんな意味を持っているのか気づいているのだろうか....
だが総司は深雪の頭をふんわりと包み込んで優しく撫でた。
彼女はいつでも優しい香りに包まれている
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