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「...ひ...っ゛....き..」
「.......っ..」
「緋月...」
「......んっ..かなた..さま?」
愛しき人の声にうっすら瞳を開ければ、やはりそこには愛しき人。心配そうな顔を覗かせていた。
「緋月?」
いつも見せないその顔に緋月から苦笑が零れた。
視線を外し奥の部屋を眺め可笑しそうな笑みを零すと再び澄んだ瞳で哉汰を見つめた
「申し訳ありません。...大丈夫です...椿を寝かせたら私まで眠くなってしまっただけです。」
「なら、いい。...帰ってきたら壁に凭れて眠っていたから心配した。」
彼が安堵する顔を見るとこちらも安心する。ふわりと彼の頬を撫でた。
そこでふと手が止まる
自分は何の夢を見ていたのだろう。
同じ仕草
似た言葉
自分と似た声
思い出そうとすればするほど砂のように記憶が零れ落ちた。
「緋月?どうかしたのか?」
その言葉にハッとすると瞳を細め遠くを見つめた
「夢を見ていました...」
「夢?」
緋月は哉汰に視線を移さぬまま、静かにゆっくり頷いた
「柔らかくて、暖かい日差しに包まれていました。」
此処とは違う程に
「この世界(忍)とはかけ離れて...穏やかな空気が流れて...」あの二人は果たして兄妹だったのだろうか?
それとも......
そこまで考えると自分が可笑しくまたクスクスと笑みを零した。
「哉汰様...」
「ん?」
「ミユキ...」
『深雪...』
「早う白い雪の世界が見とうございますね....あの白銀の世界を....」
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