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見回りを終えて、日当たりの良い縁側を歩いて自室に向かえば、障子の隅から白い手と淡い桃色の反物が覗いていた
「深雪さん?」
「あ、お帰りなさい。総司さん。」
声を掛ければ彼女は作業をしていた手を止めて、ふんわりと笑って立ち上がった。
「お疲れ様でした。」
「ありがとうございます。」
深雪に隊服を預ければ、今日も街は平和だったのですねと嬉しそうな声が返ってくる。
「深雪さんは何をしていたんです?」
普段、忙しく屯所の中を動き回っている彼女にしては珍しい。
嬉しい事ではあるが...
深雪は再び柔らかい笑みを浮かべると作業をしていた位置に腰を下ろした。
「総司さんの来年の春用の着流しと袴を...」
「えっ?」
「総司さんの繕い物、結構使い込まれていたので、そろそろ新調された方が、と思って...」
迷惑でしたか?と困った顔をする深雪を抱き締めずにはいられない。
「凄く嬉しいですよ。...ありがとうございます。」
「良かった...」
安心したような声に総司からも笑みが零れる
「そういえば、よく私の寸法が分かりましたね。」
測られた覚えは全くない。
深雪はそれに面白そうに笑みを浮かべた。
「それは...毎日、お着替えを手伝っていれば分かります。」
「着替えですか...」
「えぇ。まぁ、少しは総司さんの袴を拝借しましたけど。」
そう言ってクスクスと笑う彼女を見て、本当に器用な人だと関心してしまう。
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