SS11

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「雨か...コホッ」 雨が降った日の夜の見回りは体に相当応える (暇だなぁ...) 何か無いかと気配を巡らせても何もない。 「隊長、」 後ろを見れば隊士達が寒そうにしている。 各隊の中でも精神的にも技術的にも洗練された者が集まっているここの隊士でも、この雨と寒さは辛いらしい 「何も無いみたいですから、戻りましょう。」 「はい!」 幾分隊士の返事が明るいような気がしたが気にしない。 皆、同じ気持ちだろう。早く帰って温まって疲れを取りたい。 「...鍛錬ついでに走って帰りましょうか。」 「はい!!」 喜ぶ隊士達は挙って走り出した。それに総司は仕方ないなと苦笑を漏らした。 自分だって早く帰らなければ。 彼女が心配でたまらない。 想像出来てしまう。 彼女がこの土砂降りのような雨を部屋の隙で魂が抜けたような瞳で映している姿が。 「急ぎましょうか...」 袴に泥が跳ねる事も気にせずに総司は走った。 「...雨...」 九月の終わりにしては強い雨。見る度に知らないうちに心は締め付けられている。      断末魔の悲鳴  刀が振りかざされる    飛ぶ血飛沫       桶を返したような雨 断片的に記憶に出る光景に吐き気がした 目の前の雨と記憶の光景が入り混じる 情けない顔を晒すまいと自分なりに装いを普段と変えたが、ちゃんと何時ものようになっているだろうか? .
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