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「...雨..雨は....」
どうして死人のように冷たいのだろう...
ドタドタドタ...
報告を手短に済ませ、ずぶ濡れになった体もろくに拭かないまま自分の部屋を目指す。
床を濡らして賄達の仕事を増やしてしまったことは申し訳ないが、仕方無い。
スパン!
「深雪!」
障子を勢いよく開けて彼女の名前を呼ぶが、部屋は静寂に包まれていた。
襖を開けたが、そこにも姿はない。
ここに居ないとなれば“あちらの”部屋にいる
深雪を早く見つけ出したい。
向かった場所は彼女の部屋。自分の部屋に居ないとなれば此処しかいない。彼女が一人になれる場所。
障子が締め切られた部屋が連なる中、一番置くの部屋だけが開いている
「深雪!...ッ雪...」
見た瞬間、思わず息を呑んだ。
「...沖田...さ..ん...」
高価な仕事でしか着ない着物を纏い、自分があげた髪留めを黒い艶やかな髪に付けて、座り込んでいた。
山南さんにいつだったか教えてもらった絵巻の中に出てくる姫君のように見えた。
「深雪...」
見とれてしまいそうになるが、はっとして彼女の肩を掴み、深雪を見つめた。
「雨..」
「...えっ?」
「雨はどうしてアカイのですか?」
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