―冬の夜―

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  ハァハァと肩で息をし涙は止まらず興奮と恐怖からか膝は ガクガクと震えていた。 それでも これだけは言いたかった。   『…わっ…私は人間っ!!…もう…あなたの人形で いたくないっっ……!!』   殴られる事で自分の感情に蓋をして以来 何年か振りに大声を張り上げた。   ――言ってやったぁ…!! ……逃げなくちゃっ!!   壁に身を寄せて真ん丸に目を見開いてる息子に向かって素早く言う。   『…行くよっ!おいで!』   勢い良く差し出された私の手に面食らった様子の息子も言った言葉を理解したのか しっかりと手を差し出し ぎゅっと捕まって来た。   さっき確認した携帯と お財布を引ったくる様に掴むと靴も履かず家を飛び出した。   寒い寒い冬の夜だった。
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