―冬の夜―

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  『パパきらいっ!!』   突然 小さな口から吐き出された大きな声。 聞いた事がない様な息子の声。  遠退いて行く意識の中で飛び込んで来たのは息子の声と視界を遮る小さな手。 ――震えてる。息子の手が震えてる。 ボロボロの畳の上に必死に踏ん張ってる息子の足が震えてる。   お散歩の途中 小型犬が近付いて来るだけでグシャグシャに泣きながら抱き着いて来る息子。 私が お隣りに回覧版を渡しに行くだけで淋しくなり泣く息子。 引っ込み思案で公園の お友達とも打ち解ける事が苦手な息子。 怖いはずなのに…絶対怖いはずなのに…。 真っ直ぐに彼を睨み付けている息子の目には沢山の涙が溜まっていた。
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