第一話:幸運レンタル機

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「はあっはあっ」 朝の住宅街を走る人影。 制服姿にカバン。 息を切らせながら、懸命に走る。 向かう先は駅。 時刻は午前8時。 彼の名は持内孝介〈モテウチ コウスケ〉18才。 受験を控えた高校生だ。 現在、通学中。 遅刻寸前だが・・・ 彼の家から駅までは、歩いて10分程の距離。 学校は、2つ先の駅の近く。 8時5分発の電車に乗れば、ギリギリ遅刻せずに済む。 その為、孝介は今懸命に走っている。 駅の改札口に着くと、すぐさま定期を探す。 「あれっ?」 しかし、見あたらない。 現在8時3分。 もう時間がない。 しかし、定期が見あたらないのだ。 「何やってんだ」 「早くしろ!」 後ろから、怒鳴り声が聞こえる。 「すっ、すいません」 慌てて改札口の列から横に出る。 「何でだ?確かにカバンに入れたはずなのに・・・」 必死でカバンの中を探す。 「あっ、あった!」 急いで改札を抜け、ホームへ走る。 現在8時4分。 何とか間に合いそうだ。 その瞬間・・・ 手が人にぶつかり、カバンを落としてしまったのだ。 更に、先程定期を探す際に開けたカバンを閉めていなかった。 当然、中身は散乱。 「あぁ、ちくしょう」 急いでカバンを拾い、中身をかき集める。 《プルルルル~》 無情にも、彼の目の前で扉は閉まり、電車が動きだした。 「ちっきしょう」 こうして、孝介の3日連続遅刻が確定した。 呆然としていると、辺りからクスクスと笑い声が聞こえる。 急いでカバンを拾うと、そそくさと人混みに隠れる。 (くそ~、朝からツイてねぇ~) 仕方なく、10分後の電車に乗る。 学校に到着したのは、8時40分を回っていた。 当然、他の生徒の姿はなく、校門は静まり返っていた。
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