第一話:幸運レンタル機

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向田の小言から解放してくれたのは、チャイムの音だった。 「しかたない・・・ 持内、レポートは来週持ってこい。 それから、遅刻のバツとして10枚追加だ」 そう言い残し、向田は教室を出て行った。 「はあ~」 どっと疲れが出る。 椅子に座ると、机にうつぶせになる。 「な~にやってんだよ」 不意に声を掛けてきたのは、伸吾だった。 野々村 伸吾(ノノムラシンゴ)、孝介の幼なじみ。 ここ最近、急成長してきた会社の社長の息子。 成績優秀、スポーツ万能、背も高く2枚目。 しかしきどった様子もなく、クラスの人気者だ。 特に女子には、絶大な人気を誇る。 対して孝介は、成績は中の下、スポーツは人並み。 加えて背は低く、顔もイマイチ。 生まれてこのかた、彼女ができた事もない。 対照的な二人だが、子供の頃からの親友。 今でもその関係は続いていた。 「伸吾か・・・」 顔を上げ、返事を返す。 「で、3日目の遅刻の理由は?」 伸吾がニヤニヤした顔で聞いてくる。 「どうもこうもないよ。 朝まで勉強してたんだよ。 誰かさんと違って、俺は出来損ないだからな。 それに、レポートもあったし・・・」 ダルそうに答え、また机にうつ伏せる。 その時だった。 《パコッ》 何かで頭を叩かれた。 痛くはないが、顔を上げ振り向く。 「なんだ、美鈴か・・・」 そこには、ショートカットの小柄な女子の姿。 彼女は明石 美鈴(アカシミスズ)。 孝介のもう一人の幼なじみだ。 「何やってんのよ。3日も続け遅刻なんて・・・」 腕組みをして、呆れ顔で孝介を見つめる。 「目覚ましが壊れてたんだよ」 無気力に答える。
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