友達

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「少し体の調子が悪いの。」死については語れなかった。「そう。」奈緒の子供がぐずり、私は言いたいことも、言うべきことも口にしないで帰った。家に帰って、引き出しをあさる。たしかあったはずだ。引っ張り出しのは、真っ青のほぼ新品の便箋と封筒と青い鳥をかたどったシールが入ってるレターセット。春幸に手紙を書こうと、大学生の時に買ったものだった。たぶん、書きたいことは山ほどあっただろうけれど、出した覚えはない。奈緒の家の帰り道、手紙を書こうと思った。 遺書 と読んでもいい。そして、何も深く考えないようにして。あまり飾った言葉なんか気にしないようにして、私は遺書を書いた。
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