心臓

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満員電車の帰り道。電車の窓には自分の顔がぼやっと映り、目の焦点を外に合わせると大都会のビル群が見える。まるで生き物みたいに、地面から生えているように、気味が悪い。今日、心臓がよくないと言われた。 あと3ヶ月。 大学を卒業し化粧品会社に就職して、地元を離れて一人暮らしをしている。 10年が過ぎた。 10年。 なにがあってもおかしくない月日であり、たしかにいろんな出来事があった。たくさんの人と逢い、去って行く背中を見た。大人になるほどに、嘘がうまくなっていく。だからって、なんとも思わない。みんなそうしているのだから。 一人で「ただいまー」と言うけど、もちろん返事はない。寂しくもない、馴れがそうさせたのだ。部屋で一人で考えた。ダレに、この事を言おうか。恋人、友達、家族。思いついてもパッと思うひとはいなかった。そしていると、四角い部屋の中で一人の気がした。
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