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そう考えてから、携帯電話で春幸のナンバーを押した。「はい。」いつもの不機嫌そうな声。春幸の声がなぜか愛しく、懐かしく聞こえる。「今から会えない?」「わかった、今から迎えいく。」パンツスーツから少しラフな格好に着替えて、アパートを出た。仕事で乗ってる白いワゴンで、春幸はすでにタバコを吸いながら待っていた。「突然、どうした?」死について春幸に話そうか迷ったが、言葉は出てこない。「飯、食いに行くか。」私がうなづいてみせると、車はエンジンの鈍い音をたてて動きはじめた。いつもの飲み屋は、あまり客もいなく閑散としている。「俺さ、大阪に行こうと思うんだょね。」そう切り出した春幸に、私の心はグラグラと地が割れるようなショックをうけた。「どれくらい行くの?」「1年ぐらぃだと思う。」 1年。 1年後、私は生きてない。 あと、3ヶ月しかこの心臓は動いてくれない。 そう思うと言わずにいれなかった。「行かないで、今日ね一緒に暮らそうって言おうと思ってたの。」今度は、私の言葉に春幸が面食らう番だった。「なんかあったか?お前らしくないよ。高校の時、俺が新潟行くって言ったらお前止めなかったじゃんか。どうした、突然?」たしかに、高校の時春幸が新潟で仕事をする時。私は意地でも止めなかった。止めるというのが、子供っぽいわがままに思えたから。だけど、今はもう何も我慢出来ない。自分が急に幼い子供に戻ってしまった気がした。 涙が出てくる 。 けど、止められない。 「どうしたんだよ。」春幸の困った顔が霞んで見える。「わかったよ、わかったから。」いつだって春幸は不機嫌で不良ぶるけど、 ただただ優しい。
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