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紘紀に別れを切り出そう。そう思って、いつものレストランで待ち合わせした。仕事の事やら何やらを紘紀は楽しそうに、話す。これ以上引き伸ばしても、じれったいだけでどんどん切り出せなくなるばかりだ。「 ねぇ紘紀、別れよう。」
別れよう。
たった一つの言葉は妙に熱っぽく、私を谷に落とすように恐ろしい響きをした。
紘紀は手を止めない。「それでね、」と話をそらそうとするのを私は遮った。「待って。聞いて、別れたいの。」そう言ったけど、本当に私は紘紀を手放すつもりなんてあるだろうか。だけど、今は別れることだけ考えた。紘紀と別れる、そう決めた。「もう好きじゃないから。」紘紀はなにか言い返そうとしたけど、少し黙って「わかった。」とだけ言った。そのまま何も話さなくなってタクシーで家に帰った。
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