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リィは…雪みたい。
だから俺は、怖くて深く触れられない。
リィの奥に隠れている闇に気付きながらも…それを口にしたら…俺の前から消えてしまいそうで…
俺はリィに何も聞けない。
リィ『…ぁ…ぅ~…
…あっ…あれ?…海…着いた?』
しばらくすると、リィは目を覚まし、寝ぼけた可愛い顔を俺に向けてくれた。
隼人『あぁ~。』
リィ『ごめ…寝ちゃった…。起こしてくれれば良かったのに…。』
隼人『うん。でも、気持ち良さそうだったから…。』
リィはまた柔らかく微笑むと、
リィ『行こう。』
と、ドアに手を掛けた。
隼人『おぅ。』
浜辺に向かって歩き出すリィの後ろ姿を見つめながら、俺は意を決してリィの手を握った。
リィ『……ッ』
突然握られた手に戸惑いながらも、リィも俺の手を握り返して、前へと歩き出した。
蒸し暑い湿った空気の中…リィの手は細く冷たく…やっぱり雪のよう。
消えてなくならないように、俺はもう一度しっかりとリィの手を握り締め、浜辺に腰を下ろした。
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