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そんな人の群の中に
俯きうなだれてゆっくり歩く1人の女を見つけた。
俺は、彼女に釘付けになりながらも歌い続けていた。
すると、彼女はフッと足を止め、不意に俺の方に視線を向けた。
まさか、俺の歌声に立ち止まるなんて思ってなかった俺は、彼女と目が合うとその手を止めてしまった。
視線が絡み合いながら…彼女の目にたくさんの涙が貯まっている事に気が付いた。
『なっ…なっ…何か…リクエスト…ある?』
とっさにそんな事を口走ってしまった俺は、彼女から視線を逸らすと、楽譜をパラパラと捲り曲を探す振りをして誤魔化した。
気配を感じて顔を上げると、彼女が俺の目の前にしゃがみ込んでいて、涙を拭ってうっすら微笑んだ。
『何でも…いいの?』
『まぁ~知ってるのなら…』
『じゃ…ーいつかのメリークリスマスは…?』
『B'zの?』
『…うん。』
俺は、にっこりと微笑みギターを奏で出した。
彼女は少し驚いたように、でも嬉しそうに顔を緩め…
両頬を手で覆いながら、真剣に俺の歌を聴いてくれていた。
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