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それから、リィは本当に来てくれるようになった。
だけど、別に俺に会いに来てるわけじゃないだろうし、ただ暇だから歌を聴きに来てるだけだと思う。
それでも、俺が弾きに行く月、水、金は、リィもその場所に現れた。
そのうち俺も、家を出る時には鏡で髪型をチェックしたり、気に入った服を着て行ったり…
彼女と会えるのを楽しみにするようになっていた。
そんな自分に苦笑いを浮かべながら…
俺は今日もギターを抱え、軽い足取りで駅裏のロータリーへ向かう。
リィが現れる時間は、その時によってまちまちで…
俺より先に来てる日もあれば、俺が帰る頃に現れる日もある。
だけど決まって言えるのは…
リィはいつも泣いているという事。
正確には、泣いた後に来るという事。
リィなりに、涙を拭ってから来ているんだろうけど…
腫れたまぶたと、充血した潤んだ瞳は…
さっきまで泣いていた事を充分に物語っている。
それでも、精一杯の笑顔を向けてくれるリィに、俺はいつも何も聞く事が出来ず…
ただただ…
歌う事しかできなかった。
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