甘い夢

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「…んっ」 カーテンの隙間からこぼれる朝日が目に入り、冴子は目を覚ました。 ここは自分の家じゃない。 司と同棲することになったのだ。 昨日… 互いの気持ちが通じ合い、必要な存在であることを確認しあった。 冴子は寝室を出るとリビングに向かった。 そこにはソファーで毛布をかぶり眠っている司の姿があった。 冴子は司を起こさないようにキッチンに向かうと、なるべく音を立てないように朝食の支度を始めた。 「んっ…」 「あ!目覚めました?おはようございます。朝ご飯出来てますよ」 テーブルの上には焼き鮭、味噌汁、ご飯に卵焼きとシンプルな和食が並んでいた。 「いい臭い!顔洗って来る」 「はぃ」 冴子は先に座り司が来るのを待っていた。 その時、携帯が鳴った。 着信‘信夫’ 冴子はただ黙って携帯を見つめていた。 「携帯鳴ってるのに何で出ないの?」 顔をタオルで拭きながら司は座った。 暗い表情を見て相手が誰なのか、すぐに察知することが出来た。 「…旦那か?」 司が問いかけるのと同時に携帯の着信音は切れた。 「電話…出る勇気が出なかったんです…声を聞いたら傷つけることを言ってしまいそうで怖くて…」 「三橋は…何倍も傷ついてるじゃないか!」 「いくら自分が傷ついたからって、傷つけようなんて私は思いません…さ!食べましょう!お味噌汁冷めちゃいますよ」 「そうだな…じゃ、いただきます!」 「お味噌汁…味どうですか?」 「すっごく上手いよ!俺いつも朝はトーストとコーヒーだけだから和食食べられて嬉しいよ。ご飯おかわりある?」 「ありますよ」
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