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移動する車の中、冴子は流れては過ぎてゆく景色をぼーっと眺めていた。
「…何考えてる?」
「結局、私逃げちゃったなぁ…って」
「気持ちがまだ不安定なんだよ。自分で大丈夫だと自信持てるまで旦那と無理に話す必要はないし、時間が解決してくれるさ」
「自分のことなのに…課長に頼ってばっかりなのが嫌です…私…情けないですよね……」
司は車を道路の端に寄せると停めた。
そして、冴子の握りしめている手に自分の手を重ね、冴子の顔を覗き込む。
「俺に申し訳ないとか思うな。遠慮しなくていいし、泣きたい時はいつでも抱きしめてやる。お前は一人じゃないんだから…強がらなくていい…力抜いて楽にしてればいいんだよ」
「課長…ありがとうございます…」
ポンポンと優しく頭を撫でると司は再び車を走らせ始めた。
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