甘い夢

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冴子は指輪に触れると迷うことなく薬指から外した。 「三橋…」 「私が指輪したままじゃ変に思われるじゃないですか!」 外した指輪をバッグの中に入れると冴子は司の指に自分の指を絡めしっかりと握った。 「いらっしゃいませ!」 ドアを開けると店員の心地良い声が響きわたる。 内装はレンガ風造りで、オイルランプの柔らかで温かみのある灯りが落ち着いた雰囲気をかもし出していた。 テーブル席に座るとメニューを開く。 司と冴子はオムカレーを注文した。 「素敵なお店ですね…落ち着きます」 「だろ!久々来たなぁ…」 「…誰と来たんですか?」 「気になる?」 「別に…茶化さないで下さいよ!」 グラスの水を一口飲むと、司は何かを決意したように話出した。 「もう少し先に行った場所で俺のかみさんと子供が眠ってるんだ…今年は仕事忙しくてまだ1回も来てなかったけど」 「亡くなられたんですか?課長の奥様とお子様…」 「もう10年になるかなぁ…出産の時に大量出血しちゃって…産まれた子供も次の日には心臓が止まってた…」 「………っく…」 「ちょ…三橋…泣くなよ」 「課長苦しかったですよね…なのに私ったら何で独身かなんて聞いたりして…」 「お待たせ致しました」 二人の前にオムカレーが置かれた。 「しんみりした話はここまで!さぁ食べよう!本当に美味いんだよ」 司は勢い良くオムカレーを口に運んでいく。 「課長は亡くなられたご家族のこと…忘れたりしちゃダメですよ…」 「あぁ…俺は二度と誰も好きならないと決めてた」 「…だったら…何で…私を…?」
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