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「どうゆう意味?」
「私…課長のこと好きです。でも、私には課長の気持ちすべてを受け入れる自信ないんです…」
「ただ…俺は側に居て欲しいだけだ…冴子に…」
「私…結婚してるんですよ!わかってるんですか?今なら…課長も私も引き返せる…」
「俺は自分の気持ちに嘘はつけない。好きになった気持ちにも嘘はつきたくない…お前が…旦那の所に帰りたいのなら…帰ればいい」
「ひどい人…私をこんな気持ちにさせといて…」
冴子は司の胸元を何度も叩いた。
「このままじゃ…帰れないじゃないですか…」
司は冴子の顔を覆うと唇を重ねた。
冴子も司のキスに答えるように背中に腕を回す。
「……冴子…愛してる…」
司の一言が冴子の歯車を完全に狂わせてしまった。
離れた唇を求めたのは冴子だった。
冴子は自分から司の唇に自分の唇を重ね愛おしむように温もりと感触に酔いしれていた。
「課長…」
「抱いていいか?」
何も言わず冴子は黙って頷いた。
肌に触れたい…
司を感じたい…
神様が……
許してくれるのなら
一度だけ……
甘い夢を………
見させて下さい。
他には何も
望まないから……
一度だけ……
車をホテルの駐車場に停めると司は冴子の手を取りフロントへと向かった。
「お部屋は308号室になります。ルームサービスはご利用になられますか?」
「1時間後にシャンパンとつまみになるようなものをお願いします」
「では、シャンパンとチーズの盛り合わせをお持ち致しますね」
フロントの係員は司に部屋の鍵を渡すと
「素敵な1日になりますように…ごゆっくりと」
と言葉を添えた。
部屋に向かうエレベーターの中、2人は会話を交わすことなく、ただ手を繋いでいた。
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