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冴子は得意のビーフシチューを作っていた。
しばらくすると玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
「お帰りなさい!司さん」
冴子は司に抱きつくと頬にキスした。
「…どうした?」
「別に…今日ねビーフシチュー作ったの!司さん好きでしょ?」
「うん。着替えて来る」
司が寝室に入ったのと同時にインターホンが鳴った。
冴子は応答ボタンを押した。
「どちら様ですか?」
返事がない。
「……ここって新庄司の部屋よね?」
「そうですけど?」
「司は居るの?」
「いますけど…あの…どちら様ですか?」
「どうした?」
着替えを済ませた司が冴子の側に寄った。
「女の人なんだけど…司さん居るかって…」
「女……?」
司はインターホンに写る画像を見た。
「何であいつが…」
「司さん?」
「ちょっと待ってて!外で話して来るから」
司は慌てた様に出て行った。
気になった冴子は、こっそり司の後をつけた。
すると、近くにある喫茶店に二人の姿は消えた。
いけないと思いながらも冴子も喫茶店に入り、二人から近い席に座るとアイスカフェオレを注文し、二人の話に耳を傾けた。
「ここには来るなと言っただろ」
「先々月から振り込まれてないんだけど…養育費!どうなってんのよ!」
「明日まとめて振り込むから…二度と来ないでくれ」
「誓約書書いてくれる?」
司は差し出された紙に書き込むと拇印を付いて押し返した。
「あんた…また女捕まえたんだね…せいぜい逃げられない様頑張って」
女は紙をバッグにしまうと、そそくさ喫茶店を出て行った。
冴子は自分が聞いた会話を疑った。
‘養育費’
確かに、そう聞こえた…
‘また女捕まえたんだね’
またって何…?
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