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室内に入ると、心地良いリズムが奏でられている。
アンソニーがキュッと手を握りなおして、軽く一礼をすると背中に手を回し、私をリードしてくれた。
私達は言葉を発する事なく、ただじっと見つめ合いながら踊っていた。
アンソニーは優しく微笑んでいたが、時々ひどく悲しい顔をしているように見えた。
今私はどんな顔をしているんだろう。
ちゃんと笑えているのだろうか?
変わってしまった私を見て彼は何を思うんだろう…
ふと、手に力が入る。
アンソニーの手から伝わる柔らかな温もりが、とても懐かしく私の胸をズキンとさせた。
今も変わる事ないその温もり。
だけどこの先、感じる事は出来ないこの温もり。
胸が締め付けられて、涙がこみ上げてくる。
大好きなこの手を、先に離してしまったのは私だったのに。
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