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溢れ出る想いを押さえきれず、アンソニーの手をきつく握った。
少し驚いた表情をした後で口元をフッと緩めて彼は、私の力よりさらにきつく手を握り返す。
どれくらいの時間が流れたのだろう。
すっかり曲は変わり人々の目もあり、いつまでも一緒に踊っているわけにもいかず、名残惜しくそっと手を離そうとした
『…やっぱり僕には忘れる事なんて出来ない。
今でも君だけを愛してる。
もうすぐ12時を知らせる鐘が鳴る。
あの大階段で待ってるから。
もしも…
もしも君が今、幸せと感じていないなら、どうか僕と一緒にこの国から逃げて欲しい。
どこか遠い所でひっそりと生きていこう。
僕は君さえいたら、幸せなのだから…』
私が答える間もなく手は離されて、
アンソニーは一礼をして人混みに消えてしまった。
間もなく12時を知らせる鐘が鳴る。
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