第一章

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桜吹雪の綺麗な並木路。 そこにある桜色とは違った暖色の朱を放つ一人の男がいた。 髪を前髪は足らし、それ以外はオールバックの様に男の後方へと毛先を向ける特徴的な髪を持つ男は、桜色に染まった道を駆け抜けていた。 「――っくしょーッ!まさか寝坊するなんて…ッ!しかも入院式にッ!」 寝坊したのに前髪以外有り得ない方向へ向く髪は完璧にセットされているが、そこは敢えて触れないでおこう。 「だぁーッ!これだからッ、独り暮らしは、嫌なんだッ!」 そう誰にでもなく叫ぶ彼は、桜並木を抜け終わり校門へと立ち止まった。 「ふっ、入院式、開始…30秒前。 ―――終わったな。」 ガクッと両手の力を抜き、うなだれる男。風に舞う桜色の花びらを背により一層哀愁を増して見えた。 そして、予鈴が響き渡った。
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