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『よぉ、いよいよ3年だな』
電車を降りた僕に話し掛けてきたのはクラスでは仲のいい谷だ。
『そうだな。谷は進路決めたのか?』
『一応な、ヒロキは?』
『まだ、ハッキリとは決めてないなぁ』
『ヒロキならトップ推薦も狙えるんじゃないのか?』
『無理無理、アイツがいる限りトップなんか取れないよ』
『あ~、宇野ね、アイツ本当に勉強しかないよな』
『あそこまでいくと異常だよ』
『何か楽しみないのかな、アイツ』
宇野は学年どころか学校創設以来の成績優秀で全国でもトップクラスの秀才なのだがそれ以外にとりたてて目立つ所もなく…とは言ってもそれだけで充分すごすぎて目立っているのは間違いないのだが…いわゆる漫画に出てくるようなガリ勉クンを絵に書いたようなキャラであまり友達もいなくて勉強だけが心の支えのように思える…あくまで僕の想像だけど。
そんな話しをしてると背中に強い衝撃を感じた。
後ろから走ってきた女子生徒に突き飛ばされた格好になった僕は車道に弾き出され走っていた車に危うく撥ねられそうになった。
『ゴメンナサーイ』
振り返った女の子はそう一言だけ残すとそのままスピードを落とす事なく走り去り校門へと消えていった。
『大丈夫か、ヒロキ?』
『あぁ』(おいおい、危ねぇなぁ、けどかわいかったな…)
今日からの新学期に新たな楽しみを見つけたような気がしたが同時に全く進展する筈のない事も自分でもよく分かっていた。
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