第二章    夢の続き

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(え~っと…やっぱないか…) 図書館に備え付けのPCで検索してみたが今日も貸出し中だった。 (あ~読みたいなぁ、「佐賀のがばいばぁちゃん…」) 落胆してPCを離れた僕の目に飛び込んできたのはあの日僕にぶつかってきたあの子だった。 真剣に本を探している様子だったが僕の視線に気がついたのかこちらをチラッと見るとペコリと軽く会釈してその場を離れていった。 (ラッキー、やっぱりかわいいなぁ。でもさすがにここでいきなり声掛けたりしたら変に思われるよなぁ) そう思った僕は適当に二冊の本を手に取り席に着いた。 『あ…』 向かい側からそんな声が聞こえて顔を向けるとそこには参考書とノートを何冊も開けている宇野が居た。 クラスも違い話した事はなかったけど共に進学校で学年成績上位同士でお互い顔も名前も知ってるのは当たり前の事ではあった。 『宇野君来てたんだ』 『まぁね、ヒロキ君も図書館によく来るの?』 『あ~家にいたら母親がウルサいからね。逃げてきただけだよ』 『そうなんだ』 『宇野君はやっぱり推薦狙ってるんだろ』 『あぁ、ウチは決して裕福じゃないからね。推薦で特待じゃないと大学行くの親が大変だし、僕がシッカリして僕が働くようになったら親には楽させてあげたいからね』 『へ~偉いんだね』 宇野の意外な一面が見れたような気がした。 決して只のガリ勉でもなくイメージしていた程の陰気な所もなく逆に話し易くて好感が持てた。 『よかったら今度一緒に勉強しようよ』 『そうだね、ヒロキ君となら楽しく勉強出来そうだね』 『僕も宇野君に色々教えて欲しいしね。じゃあ邪魔しても悪いから僕はあっちに行っておくよ。またね』 『うん、またね』 周りからの静かにしてくれよという視線を感じた僕はそう言ってその場を離れた。 (あの子にも会えたし宇野もいいヤツっぽかったし何か今日は来て良かったな。今度の中間テストはちょっとだけ頑張ってみよかな) 運良く見つけた「東京タワー」を読みながらそんな事を考えていた。
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