私がいてもいなくても

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フラれたのは、もう去年の話だ。 二股されていたことを知ったのも去年の話。 悔しいのは、私の初めてを全部あいつにあげてしまったこと。 それ以外は別に未練なんてない。 初めてのキスは、学校帰りの暗くなりかけた公園だった。 初めてのHは、あたしの家。 どんなに忘れようとしても、すべての初めてがあいつなのだから、忘れられるはずもない。 初めて告白された。 初めてつきあった。 初めて好きだと思った。 初めて手をつないだ。 初めて抱きしめられた。 初めて…別れた。 後になって…、初めて二股されていたって、遊ばれていただけだってわかった。 好きだった気持ちも色褪せて、零した涙がもったいなく感じた。 二股のもう片方とあいつは、今も仲良くやっている。 ムカつく。 でもそこに未練なんてものはカケラもない。 ただ一つ言うなれば、あたしの捧げた初めてを全部返せと言いたいっ!! ……などと思ってみたところで、それは返ってくるはずもなく。 幸せそうな彼女の顔を見るだけで額に青筋がたつ。 そしたら、なんだかバイト先であるイタリアレストランのウェイトレスも上手くいかなくて。 人付き合いは難しくて、なんだかもう、すべてが嫌になってきて。 どうせ、私がいてもいなくても、この世界に変わるものは何もないんでしょ? なんて呟きたくなってくる。 だって私を…、私だけを好きになってくれる人なんてどうせいないんだって思ってしまうから。 たった一度の恋愛しかしていないくせにって言われたって、それでもどうしようもなく心は虚しいのだ。 一人きりのマンションの一室。 私がここで今死んだら、いったいいつ発見されるのだろう?なんてことも考えてしまう。 どうせ私は一人なんだ。 私がいてもいなくても世界は廻る。
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