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季節はもう冬である。
秋が終わり、寒くなった風に少し身を震わせて、私は家へと帰る。
もうすぐクリスマス。
去年のクリスマスは最悪だった。
今年は…葉山と神崎がいてくれる。
そう思うと少しうれしくも思う。
クリスマスのイルミネーションに彩られた町並みも、去年のあのままだったら、憎々しかっただろう。
もう大丈夫。
クリスマスのイルミネーションに心を弾ませられる。
ショーウィンドーをのぞいて、二人へのクリスマスプレゼント、何がいいかなって考えながら、家へと向かう。
ふと人通りの多い中、神崎の姿を見つけた。
声をかけようかと迷って、思い切って声をかけようとしたら、その隣にきれいな女の人の姿が見えた。
神崎は笑顔を見せている。
私はあげかけた手をおろして、こちらに気がつかない神崎の姿を見送った。
私は少し…勘違いをしていたのかもしれない。
神崎は本当にバイセクシャルであり、女の子も好きになる。
そう考えることはなかった。
神崎と仲良くしている女は私だけ…って…、少し喜んでいたことにも気がつく。
私だけ…特別なんて有り得ないのに。
少し浮かれた気持ちが沈んで、足取りもどこか重くなって、家へと帰り着く。
鍵がかかっていて、その鍵を開ける。
鍵につけられたキーホルダー、かわいい編みぐるみは神崎がくれた。
神崎が女の子だったら、こんなふうに沈まなかったのかな?
彼氏できたんだ?よかったねって笑ってるのかな?
今の私、神崎に彼女できたんだ?よかったねって言えないかもしれない。
扉を開けて、家の中へ入ると、知らない靴があった。
女の子の靴だった。
嫌な予感がした。
私は静かに靴をはいたまま家にあがって、人の気配のする葉山の部屋の扉の前に立つ。
中から聞こえてくるのは、声を潜めた女の子と葉山の笑い声。
なに…?葉山も…?
私が答えを出さなかったから?
それともただの友達連れてきた?
わざわざ私の家に?
葉山の家はあるのに?
私は部屋の扉をノックした。
「まっ、待ったっ。開けるなよっ」
そんな葉山の声が聞こえた。
なんで?やましいことがなければ、開けてもいいでしょ?
もう一度ノックをした。
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