男友達

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「なに?いきなり?イチコ、親のとこいくの?」 葉山は驚いたように住み慣れた部屋に荷物をおきながら聞く。 「一人暮らしするの」 「は?今も一人暮らしだろ?邪魔だから出ていけってこと?」 「じゃなくて、このマンションから出て、ワンルーム借りて暮らすの」 「なんで?」 私は説明が下手らしい。 少し落ち着いて、最初から最後までをきちんと言い直した。 「だったらオレんちくれば?家具ないけど、雨風は凌げる」 葉山はベットの上、あぐらをかいて座り、クッションを抱いて絨毯に座る私に言う。 「それじゃ、なんか新しい再スタートって感じがしないんだけど?」 「なに?不満なのか?今までどおりでよくね?」 「葉山、女連れ込む場所なくなるよ?」 私が言ってやると、葉山は言葉に詰まり、軽く咳払いをする。 「あのな、イチコ。いざとなればラブホだってあるわけだし、そんなの気にしない」 ちょっと気にしたくせに。 私と葉山がそんな話をしていると、神崎も私の家へと戻ってきた。 家から出ていくことを話すと、神崎は少し考えて、 「ショウヘイんちに転がり込もうか」 なんて3人で住むのが当たり前のように言ってくれた。 違う違う違うっ。 なんでそうなるかな? 私は新しい気持ちで短大へ通いたいっていうのに。 「でも、とりあえずイチコが住んでるはずの家が必要だよな?」 「そのへんのアパート借りればいいんじゃないか?」 なんて私をよそに、二人で話が進んでいく。 ダメだっ。阻止しなければ、私、流されちゃうっ。 一人暮らしのワンルームは、かわいく飾りたいのに変なボロアパートにでも決められてしまいそうだ。 「あのっ、なんで3人で暮らすの前提なのっ?」 私はそう慌てて言葉を挟んだ。 「だって…一人で暮らすの淋しいし」 葉山は言う。 だったら彼女連れ込んで一緒に暮らせばいいじゃないかっ。 「藤崎、一人にするとのたれ死んでそうだし」 神崎は言う。 死ぬこと考えたことないとは言わないけど、ちゃんと一人で暮らせますってばっ。 なにっ?保護者っ?この二人は保護者なのっ? 「私、女なんですけどっ?」 「それがなに?」 二人の言葉はかぶった。 なんか…、なんかっ! 私、女じゃなくて子供扱いされてないっ?
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