男友達

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高校を卒業して、大学へ通うまでの1ヶ月。 私は暇を持て余すように新しい私の部屋の模様替えをする。 この神崎のマンションの間取りは、4LDKとなる。 私の家より更に1部屋増えた上に、その広さも広くなったし、オシャレだし、なんだか高級マンションで、マンションのロビーには清楚なたたずまいの管理人さんというか、受付というか、そういう人がいる。 私には分不相応なマンションだと思う。 これはセレブの億ションというやつだろうか? そんな高級なところに、なんで私の家があるのか謎すぎる。 もとの私の家から運び込まれた家具は机とベット。 模様替えをするというほど動かすものもない。 ただ私のベットというと、神崎がずっと使っていたから、私のにおいじゃなくて、神崎のにおいがする。 神崎のにおいは石鹸のにおい。 今更、このベットを使うのも、なんだか気恥ずかしい。 ぬいぐるみたちを部屋の中、移動させて、ぽんぽんっと軽くその頭を叩いていると、部屋をノックする音が聞こえて返事をした。 神崎が顔を出す。 「買い物いくけど、一緒にいく?」 そう言う神崎の手には車の鍵があった。 受験勉強しつつ、そのストレスを解消するようにこの男は車の免許を取りに行っていたのだ。 そしてどちらも受かっているのだから器用だと思う。 この人にできないことを捜すのが難しいかもしれない。 「神崎の車はいや」 私ははっきりと答えた。 若葉マークの車なんてこわくて乗れない。 「じゃあ、徒歩?」 「だったらいく」 私はそう笑顔で返事をして、神崎と一緒に町へ買い物に出る。 一緒に歩いていると、神崎に視線がくるのをいつも感じて、私は決して隣を歩いたりはしなかった。 斜め数歩後ろを歩くのが癖になりつつある。 一緒に家具を見て、足りないものを揃える。 神崎のカードで。 おぼっちゃま、金遣い荒いと思う。 私の趣味に合わせてくれて、カントリー調なものばかりが揃っていく。 「ご夫婦ですかぁ?」 なんて店員に聞かれて、私は神崎を見上げて見る。 家具を買う男と女なんてものは、そう見られてしまうらしい。 「その予定です」 なんて神崎は言ってくれるから、私は重い重い溜息をついた。 確かに受験には合格したけど、あんなプロポーズ、私受けないからね?わかってる?
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