男友達

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リビングのソファーは私のお気に入りの場所だから、お気に入りのソファーを買ってもらって、ご満悦である。 新しい家の住み心地は、広すぎる以外は悪くはないと思う。 私はコーヒーをいれて、のんびりと一人、ソファーでくつろぐ。 葉山の部屋が開いて、 「お邪魔しましたぁ」 と、女の子の声が響いてきた。 私は飲みかけていたコーヒーを零しそうになった。 最近思う。 葉山、女タラシになってない? だって今の声は、この前聞いたものとは違う気がする。 しばらくすると、葉山がリビングへと顔を出す。 少し上機嫌で、キッチンへと向かい、冷蔵庫を開けている。 「葉山の女タラシっ」 私は言ってやった。 「そう言われるほど女とつきあってないと思うけど?ナオトと別れて半年。今の3人目の彼女だし」 1人目、神崎。 2人目、私の家に連れ込んだ下級生? 3人目、今の? ……下級生のあの子ともう別れてるんだ? でもやっぱり女タラシだと思う。 葉山はペットボトルごとスポーツドリンクを持ってリビングへきて、床に敷かれた絨毯の上へと座る。 「イチコは?彼氏」 「…いらない」 私はそう答えていた。 つくれないのもあるけど、いらないって思う。 一人淋しく冷やかしているのが性にあう。たぶん。 「まだつくらないの?大学、女子大だろ?出会いないじゃん。やっぱり紹介しようか?」 「余計なお世話ですぅ」 私は言って、葉山から顔を逸らす。 葉山にも責任あるんだから、そういうことは言わないでほしい。 「……ナオトとつきあえば?」 「神崎、彼女か彼氏いるでしょ」 「いないだろ?ナオトのあの性格じゃ、無理だって」 「なんで?いい奴だよ?」 私は首を傾げて、葉山を見る。 「仲良くなればいい奴だけど、かなり人見知りするよ、あいつ。男にも女にも。イチコはオレの同居人だったし、すぐに打ち解けていたけど」 人見知り神崎なんて知らないかもしれない。 ただ、同じ高校だったけど、神崎が友達と一緒にいるのは見たことがない。 紙飛行機作って飛ばして……。 あ。 そうか。声をかけたい人のところへ飛ばしてた? 声をかけてもらえるように。 なんか…、なんだか…かわいいかも知れない。 器用って思ったけど、私以上に人付き合いが苦手? 実は不器用?
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